形あるものは許容範囲がある。音楽をパッケージするにあたって、収録時間を考慮することは避けて通れません。特にアナログ・レコードに関しては、曲数、時間によって音質自体が変化するのでかなり重要なところです。

 

しかし、アルバムやコンピレーションなど多くの楽曲を収録する作品で、どうしてもいい音で一枚で収めたい!という問い合わせも少なくはありません汗

 

一体、どこまでがクオリティを保てることができるのか、ダブプレート・カッティング技師であるWax Alchemyの諏訪内保さんにお話を伺いました。

(Wax Alchemy :以下 W)   12″インチ/LP レコードへの収録自体は、物理的に25分くらい可能ではあります。ただし、収録時間が長くなればなるほど、音量/音圧/音質を理想通りに再現する事が難しくなります。簡単に言うと、カッティングスタジオが推奨する収録時間より長くなれば音が悪くなります。
クラシックやJAZZなどの無音部分や音量の小さいセクションが多い音楽は長時間収録も可能ですが、近代的なフルレンジの音楽では不向きである場合が多いです。

 

(Wolfpack Japan) なるほど。。そしたら、単純にどうしてもレコードの特性上、音が小さくなるということなんですね。

 

(W) 音量/音圧を大きく低音を効かせるとレコードの溝が大きく左右に揺れ、溝と溝の幅がぶつからない様に大きくスペースを取る必要が有り、必然的に収録時間が短くなります。CD/デジタルオーディオの収録時間の制限はデータ量、テープはテープの長さと再生速度、レコードは面積と音量で決まります。音量が小さくなると、レコードのトレース、パチノイズと楽曲音量の比率(S/N比)が小さくなり、ノイズ成分が可聴範囲に達する場合も有ります。


*推奨収録時間例

 

(Wolfpack Japan) レコードの外側と内側では音量が微妙に変わる、ということを聞いたことがあるのですがこちらは本当なのでしょうか?

 

(W)  収録時間が長いと、レコードの溝が中心部のラベル近辺まで収録しなくてはいけません。内側に行けば行く程に解像度や再生精度は下がり、”内円歪み”というレコード特有の症状が発生し、歪み成分が多くなります。外側と内側では10kHz以上のの高音域が-3dBほど下がります。聴感上1/4ほど下がります。

 

(Wolfpack Japan) おお。。これはかなり変化するのですね。そうなると、収録する楽曲の特性と順番のことも考えなくてはいけませんね。

 

(W)  上記特性を考慮して、楽曲にもよりますが、12″インチにおいてはLP再生33rpmで最大片面18~20MIN、7″インチにおいては片面7MIN以内が作成可能範囲ですが、音質を優先して作製したい場合は33rpmで12inch片面15MIN/45rpmで12分以内、7inchは45rpmで4min以内で納めるのが、現代的なサウンド/ボリューム感で仕上がりがいい印象になると思います。収録曲順に関しても、各面の外側に収録する楽曲は、リズム、低音、高域が必要な楽曲。内側は音像が丸くなっても耐えられる楽曲の割り振りをお勧め致します。昔のレコードのラベルの内側の曲(最後の曲)にバラードが多いのは、このようなレコードの音質特性に対しての考慮があります。実際にCD盤と曲順が変わっている作品も沢山あります。デジタルは再生する場所によって音質は変わりませんが、レコードは変わります。

 

なるほど!非常に勉強になりました。諏訪内さん、ありがとうございました!

アナログ・レコードは、物理的な限界があるから面白いのかもしれません。そこで起きるプロセスと実際に鳴らしたときに得る感動。素晴らしい作品が完成できるよう心得ときましょう!

 

About the Author

Ichitaro Ohara

ウルフパックジャパン・マネージャー。1980年生まれ。レコードにまつわる業務に長く関わってきた経験をもって、スムースなサービスができるよう心がけます。