レコードの内側にうっすら刻み込まれた番号を見たことはありますでしょうか。

 

これは、マトリックス(Matrix)というもので「鋳型」という意味になります。LPレコードやその前のSPレコードなどは、樹脂を熱した鋳型(金型)で圧縮して製造されていました。その際に使われる金型に刻まれた番号が、「マトリックス番号」と呼ばれるものなのです。

 

まずその前にラッカー製造における、LPレコードの製造過程をここで確認しましょう。マスターデータに収められた音源は、カッティング・マシンによって、金属の表面にラッカーを塗布したラッカー盤に溝の形で刻み込まれます。これがラッカー・マスター盤と呼ばれるものになります。ラッカーマスターの溝は柔らかく、保存には適さないので、これに銀メッキを施して剥離させ、溝が凸状の鋳型を作ります。これがメタル・マスター盤と呼ばれるものです。これは、保存用のマスターとなりますから、製造に当たってはそこからもう1度凹状の溝のメタル・マザー盤を作り、さらに凸状溝のスタンパーを複製します。このスタンパーで塩ビをプレスして、LPレコードが製造されます。スタンパーはある程度プレスを行うと使えなくなる消耗品なので、メタル・マザーからは複数のスタンパーが作られます。さらに、メタル・マザー自体も、メタル・マスターから複数作られています。

ラッカー・マスター盤が出来た時点で、内周の無音溝の部分に、識別のための番号が打たれます。これがマトリックス番号になります。メーカーによって製品としてのLPの品番と同じものである場合もあり、独自のものである場合もあります。通常、1枚のラッカー・マスター盤から製造出来るLPレコードは数万枚といわれていますので、それ以上製造する場合には、新たにカッティングをやり直すことになります。その時点で、マトリックス番号も新たに打ち込まれます。その他に、メタル・マザー、スタンパーがそれぞれ何番目のものかを表す情報も、この部分に刻印されています。
DMMカッティングをメインに行う弊社提携工場では、直接メタル・マザー盤から刻印されていきます。

 

よくレコード・コレクターたちの間で「マトリックス番号が〜」といった話しを耳にします。これは、マトリックス番号で製造枚数が少なかったものや、マトリックス番号が若ければよりオリジナルでも音質がよい?とかを示す記号になるので、中古レコードにおける判断基準のひとつになることが多いです。

 

皆さんお持ちのお気に入りのレコードが、どのような刻まれ方でどこで作られたか改めて見直してみるのも楽しいかもしれません。

 

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Ichitaro Ohara

ウルフパックジャパン・マネージャー。1980年生まれ。レコードにまつわる業務に長く関わってきた経験をもって、スムースなサービスができるよう心がけます。