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CATEGORY - レコード作り / コラム
レコードプレスに適したマスターについて
レコードプレスにはまず音源となるオーディオデータが必要です。入稿し、期待を膨らましてテストプレスが届くのを待つ。初めて針を落とすまで緊張感とワクワクする気持ちは何物にも変えがたい瞬間です。そんなとき、「あれ?思ったよりも音がよくない…」と感じることもあるでしょう。ウルフパックでは良い音のレコードをお作り出来るよう最善を尽くしますが、やはり音の仕上がりは概ね元のオーディオデータのクオリティに依存するといえるでしょう。本ブログでは最良の結果を得るためにオーディオデータをどうマスタリングするべきかをご紹介致します。
入稿ファイルについて
音源の形式はWAVかAIFFでのデータ入稿となり、MP3などの圧縮ファイルは受け付けておりません。
レコードはCDやデジタルと異なり、最終的にマスタリングされたデータがそのまま音の仕上がりになるわけではありません。レコードの音が決まるカッティングという工程では以下の内容を含む様々な制約が存在し、それらを調整する必要があります。レコードに適切なマスタリングが行われていれば、より良い音の仕上がりに近づけるでしょう。
① 過度なリミッターの使用を控える
デジタルデータ上でラウドになっていても実際に仕上がるレコードのボリュームには必ずしも直結せず、RMS値が過大なオーディオデータはカッティング時に何かしらの問題が起きる傾向があります。適正なダイナミックレンジの確保が音質に優れ、ボリュームの大きいレコードを作るための手助けとなるでしょう。
② 低域の逆相成分に注意する。
低域(音源により20Hz – 500Hzの間)に含まれる逆相成分は、針飛びを起こす不安定なレコードの溝の原因となり、程度によってはカッティングそのものが不可能な場合もあります。デジタルデータと違いレコードの低域には物理的制約があり、許容範囲内に抑えることが肝要となります。
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③ 高域のケア
1.5kHz〜10kHz辺りに含まれるボーカルの歯擦音やハイハット、シンバルなどの過度なシビランスは、カッティングアンプ及びカッターヘッドへの深刻なダメージとなると同時に、レコード再生時の歪みの原因となるため、ディエッサーやマルチバンドコンプなどを使用してケアする必要があります。
以上、レコードプレスの際に必要なオーディオファイル作成のポイントをご紹介しました。もちろん楽曲によってキャラクターや特性は変わるので処理すべき点は異なりますが、上記の内容をふまえてオーディオデータを作成してみてください。
Ichitaro Ohara
ウルフパックジャパン・マネージャー。1980年生まれ。レコードにまつわる業務に長く関わってきた経験をもって、スムースなサービスができるよう心がけます。
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