ボリュームの大きいレコードを作るために

製作したレコードが市販のレコードと比べてボリュームが小さくてなんだかショボく感じてしまった…と感じたことのある方もおられるでしょう。勿論アンプのボリュームを上げれば良いだけの話ではありますが、ロックやクラブミュージックなどラウドな仕上がりが好まれるジャンルではボリュームの小ささはマイナスの印象になりかねません。本ブログではボリュームが大きいレコードを作るためにどのようにオーディオデータを仕上げるべきかと、基本的なレコードの仕組みについてご紹介します。

まず前提として、弊社提携レコード工場ではカッティング方法をフラットカットとラウドカットのどちらかになります。フラットカットとは名前の通りオーディオデータをフラットにカットする方法で、LPの標準的な音量感がベースとなります。ラウドカットとはオーディオデータを音色の変化が酷くならないラインまで可能な限りボリュームをあげてカットする方法で、フラットカットと比べて1〜4,5dBほどボリュームがあがります。

ウルフパックではクラシックやSSWなど一部のジャンルを除いて全てのご注文はS/N比を考慮してラウドカットをベースにカッティングを進めさせて頂いておりますが、実際は全てのタイトルをラウドにカッティング出来るというわけではありません。ラウドカットが出来るかどうかは、レコードのサイズと回転数、収録時間、オーディオデータのマスタリングが影響し、それらがラウドカットの条件をクリア出来ていなければ自動的にフラットカットになります。

①レコードのサイズと回転数、収録時間

以前アナログ・レコードが許容する収録時間についてで説明した通り、レコードはフォーマットや回転数によって片面に収録出来る時間が限られています。例えば7 inchの45 rpmであれば片面の推奨収録時間は5 minまでとなりますが、これは5 min分のレコードの溝なら標準的なボリューム（フラットカット）で7 inchレコードの収録可能領域に入るという意味です。10 inch、12 inchと大きくなればなるほど収録可能領域が広がるので長い時間カット出来るということですね。また、レコードの溝は音量や低音が大きくなればなるほど1本の溝が使う領域が広くなり、音量や低音が小さくなればなるほど1本の溝が使う領域が少なくなります。よって、オーディオデータの時間が推奨収録時間以下であればあるほどボリュームの大きいレコードになり、推奨収録時間を超えれば超えるほどボリュームの小さいレコードが出来上がる事がわかるかと思います。※7inch 33 prmは収録可能領域と線速度によりラウドカットは不可

②オーディオデータのマスタリング

もしオーディオデータにCDや配信と同じマスタリングを施されていれば、ダイナミックレンジの不足などレコードプレスに適したマスターについてで紹介した様々な制約の影響によりラウドカットは出来ない可能性が高いです。元のデータのリミッターのGain Reductionの量が多ければ多いほど反対にレコードのボリュームは小さくなっていくと考えて良いでしょう。

以下、WAX ALCHEMY STUDIOのエンジニア諏訪内さんとの解説になります。