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CATEGORY - レコード作り / コラム
画面で見た色のまま刷り上がらない理由。入稿データづくりのすすめ。
WOLFPACK JAPANのレコードプレスは、チェコのGZ Mediaという工場で製造されます。盤のプレスだけでなく、ジャケットやレーベルなどの印刷物も同じ工場の中で一貫して作られます。レコードの音と同じく、印刷も入稿されたデータを基準にそのまま作られます。印刷後の修正はできないため、「画面で見ていた色と違う」「文字が切れてしまった」といったトラブルは、データを作る段階で防ぐことがいちばんの対策です。
本記事では、工場でジャケットやレーベルを印刷する際に知っておきたい仕組みと、入稿前に確認したいポイントをまとめました。デザインの経験が少ない方にも読めるよう、専門用語はできるだけ噛み砕いて説明します。
【モニターの色と、印刷の色は仕組みが違います】
パソコンやスマホの画面は「光」で色を作っています。赤・緑・青の光(RGB)を混ぜるほど明るくなり、すべてを最大にすると白になります。
一方、印刷は「インキ」で色を作ります。シアン・マゼンタ・イエロー・黒の4色(CMYK)を重ねるほど暗くなります。紙は自分では光らず、当たった光の反射で色が見えます。
このため、画面では出せても、インキでは物理的に再現できない色があります。特に蛍光色のような鮮やかな青・緑・ピンクは、印刷すると必ず落ち着いた色になります。これは不具合ではなく、光とインキの仕組みの違いです。
データを最初からCMYKモードで作っておくと、制作中に画面で見る色が「印刷で出せる色」に近づき、仕上がりとのギャップが小さくなります。
【注文枚数で、印刷方式が変わります】
・100〜299枚:デジタル印刷。版を作らず、データから直接印刷する方式です。少ない枚数・短い納期に向いています。ラミネートなどの追加加工には対応していません。
・300枚〜:オフセット印刷。版を作ってインキを転写する、印刷物の標準的な方式です。UV印刷にも対応しており、コートなしの特殊紙などにも鮮やかに印刷できます。
300枚未満のご注文でオフセット印刷をご希望の場合も、仕様変更や追加料金のご案内が可能です。ご注文時にご相談ください。(レコードのご注文は100枚から承っています)
【色の基準:ヨーロッパの工場は「FOGRA」で刷ります】
印刷の色には、国や地域ごとの基準があります。日本の印刷会社の多くは「Japan Color」という日本の基準に合わせて印刷しています。ヨーロッパの印刷業界の標準は「FOGRA」です。基準が違えば同じデータでも仕上がりの色の傾向は変わります。
プレス工場はチェコにあるので、印刷はFogra coated 39という基準で行われます。
ここで大切なのは、日本の印刷所向けの設定をそのまま持ち込まないことです。Japan Color 2011などのカラープロファイル(色の基準情報)がデータに埋め込まれていると、工場の基準と食い違い、意図しない色ズレの原因になります。
・カラープロファイルはFogra coated 39に設定して、データを作成してください ・他のプロファイルの埋め込みは行わないでください。
【RGB画像をCMYKに変換するときの注意】
写真素材やデジタルで描いたイラストはほとんどがRGBで作られています。これをCMYKに変換すると、鮮やかな色ほどくすみます。インキで再現できる色の範囲が、光より狭いためです。
変換は入稿直前ではなく、制作の早い段階で行うのがおすすめです。くすんだ分を見ながら色を調整する時間が生まれます。
また、画像の解像度は原寸で300dpi以上(モノクロの場合は500dpi以上)を確保してください。下回ると、仕上がりが粗くなる可能性があります。ウェブ用の画像(多くは72dpi)の流用は、解像度が足りない場合があります。
QRコードやバーコードにも注意が必要です。ネット上のサービスで作成したものはRGBの黒で出力されていることが多く、そのままCMYKに変換すると4色を混ぜた黒(4色割れ)になり、印刷時のわずかなズレで細部がにじみます。読み取りに関わる部分なので、K100%の黒で作り直してください。
【黒の作り方には、ルールがあります】

黒は印刷トラブルが起きやすい色です。
1.4色すべて100%の黒(4色ベタ)は使わない CMYKをすべて100%にすると、インキの総量は400%になります。インキが多すぎて乾かず、重ねた紙の裏に色が移ったり、紙同士が貼り付いたりする原因になります。インキ総量の上限は工場ごとに異なり、GZの場合は320%です。超えている場合は工場側で濃度調整が行われるため、実際の仕上がりの色味がデータと変わることがあります。
2.深い黒が欲しいときは「リッチブラック」 K(黒)100%にC・M・Yを足した黒をリッチブラックと呼びます(例:C40 M40 Y40 K100)。黒1色よりも締まった深い黒に仕上がります。ただし総量320%以下に収めてください。
3.小さい文字と細い線の黒は、K100%の1色で 4色を重ねた黒は、印刷時のわずかな位置ズレ(見当ズレ)で輪郭がにじんで見えることがあります。小さな文字や細い線はK100%単色が安全です。
また、黒やグレーをC・M・Yの掛け合わせだけで作るのは避けてください。刷るたびに赤っぽく・青っぽく振れる不安定な色になります。グレーはKの濃度だけで作るのがおすすめです。なお、C・M・Kは5%、Yは10%を下回ると、薄すぎて印刷で再現されない場合があります。
【特色(PANTONE)を使いたいとき】

CMYKの掛け合わせでは出せない色があります。鮮やかなオレンジ、金や銀のメタリック、ブランドカラーの厳密な再現などです。こうした色は、あらかじめ調合された専用インキ「特色」で印刷します。特色の世界標準の色見本がPANTONEです。
特色印刷のルールは次のとおりです。
・PANTONEのみ対応しています(DICカラーは非対応)
・PANTONEは「U」(非コート紙用)の番号のみの取り扱いです(一般的によく使われる「C」(コート紙用)は取り扱いがありません)
・メタリックカラーは一部取り扱いがありますが、レーベルには使用できません(盤への貼り付け・乾燥の工程で問題が起きるため)。
・レーベル、ジャケット、インサートに印刷できます(ダウンロードカードは除く)
・CMYK+PANTONEの組み合わせや、PANTONE 3色以上のご指定は追加料金がかかります。お見積り時にご相談ください
入稿データでは、プロセスカラー(CMYK)と特色のレイヤーを必ず分け、データ内に色の指示(スウォッチと色番号)を含めてください。特色の指示がない場合は、自動的にCMYKでの印刷になります。
※2022年のライセンス変更により、最近のIllustratorやPhotoshopにはPANTONEの色見本が標準では入っていません。Adobeは、プラグイン「Pantone Connect」経由でPANTONEの色見本を利用するよう案内しています。プラグインが無い場合も、新規スウォッチで特色を作成し、使いたい色番号をお伝えいただければ問題ありません。
【入稿前チェックリスト】
データを仕上げたら、入稿前に以下をご確認ください。
・形式:PDF(PDF/X-1a推奨)またはai ・テンプレート:公式テンプレートを使い、アートボードのサイズは変更しない。ガイド類は削除するか、印刷用と別のレイヤーに分ける
・カラーモード:CMYK(モノクロ作品はグレースケール)
・カラープロファイル:Fogra coated 39(Illustrator上の表記はCoated FOGRA39)。他のプロファイルは埋め込まない
・インキ総量:320%以下
・文字:すべてアウトライン化(Photoshopはシェイプ化)。サイズは6pt(8px)以上
・画像:すべて埋め込み。原寸300dpi以上(モノクロは500dpi以上)
※PDF入稿であれば書き出し時にフォントや画像が自動で埋め込まれますが、WOLFPACKでアウトライン化と埋め込みをお願いしているのには理由があります。フォントの中にはライセンスの制限で埋め込みできないものがあり、書き出しに失敗したり、意図しない書体に置き換わったりすることがあります。また、ai形式での入稿では、リンク画像の添付漏れが定番のトラブルです。元データの段階でアウトライン化と埋め込みを済ませておけば、どの形式・どの環境でデータを開いても事故が起きません。
・塗り足し:3mm必須。断裁はわずかにズレるものなので、紙のフチまで印刷したいデザインは仕上がり線の外までデザインを伸ばす。切れて困る文字やロゴはセーフライン(テンプレート内側の線)の中に。レーベルは中心の穴の位置までデザインを埋める
・ラスタライズ効果設定:300ppi以上(初期設定の72ppiのままだと、ドロップシャドウやぼかしが粗く印刷されます)
・特殊効果:透明・複雑なパスやブラシは、レイアウト確定後にラスタライズして画像化する
・オーバープリント:意図しない「オーバープリント」設定が残っていると、白い文字が印刷されない、下の色が透けるなどの原因になります。書き出し前にオーバープリントプレビューで確認する
【レーベルの色は「変わることがある」を前提に】
レコードのレーベルは、他の印刷物と違う環境に置かれます。印刷後に熱風での乾燥と高温のプレス工程を通るため、まれに指定した色から変化が生じます。特に白・青・ピンク・紫・オレンジ・緑などの淡い色合いは特に影響を受けやすくなります。
この色変化は製造工程上避けられないもので、工場ではクレームの対象外となっています。レーベルのデザインは、多少色が動いても成立する配色にしておくと安心です。
なお、追加料金で簡易校正(本番前に色を確認する試し刷り)にも対応していますが、基本的にはおすすめしていません。簡易校正はデジタル印刷で出力するため、オフセット印刷の本番とは色味が変わります。またレーベルについては、上記の乾燥・プレス工程での色変化があるため、事前に色を確認する意味がなくなってしまいます。色の再現が特に重要な場合は、ご注文前にご相談ください。
【入稿前にご相談ください】
WOLFPACK JAPANでは、入稿データのチェックを無料で行っています。テンプレート通りに作れているか、インキ総量が超えていないかなどを確認し、問題があれば修正方法をご案内します。
Ichitaro Ohara
ウルフパックジャパン・マネージャー。1980年生まれ。レコードにまつわる業務に長く関わってきた経験をもって、スムースなサービスができるよう心がけます。
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